アビリティ支援センター

支援のこと

1.支援の背景

 教育研究機関としての大学では、学生は、学問領域において必要とされるだけの能力を有しているかどうかで評価をされます。ところが、障害があるために、その学生の本来の力が発揮できない、ということも起こりえます。例えば歩行が不自由であるために図書館に行けず、資料があれば書けたであろうレポートが書けなかった、というようなことです。
 名古屋大学では、障害のために被るこうした不利益をなくし、在学生であれば誰もが同じように教育を受け、その能力を発揮できる機会を保証しています。それが障害学生支援の目的です。
 「アビリティ支援センター」は、名古屋大学におけるこうした支援を推進し、学生がその持っている能力を十分に発揮できるよう支援に携わり、同時に学部や研究科などで適切な支援が行なえるように教職員をサポートしています。

2.支援内容

 アビリティ支援センターが行なっている活動は大きく2つに分かれます。
 1つめは、「修学支援」と呼ばれる活動です。ここには2種類の活動が含まれています。1つは、どのような学生でも、必要な場所や情報、機会にアクセスすることができるように環境を整備する活動です。ユニバーサルデザインの推進がその代表的なものです。もう1つは、1人1人の学生の抱える困難に応じた、個別の支援です。教育や研究の本質を損なうことなく、学生1人1人の特性や困難に合わせた履修や研究が行なえるよう調整を行ないます。「合理的配慮」と呼ばれるものが主なものです。
 もう1つの活動は、学生1人1人の成長・発達を支援することです。先のものが学術的活動に参加することを支援しているのに対して、こちらは他者や自分を知ること、障害や特性とより良くつき合えること、を目標として、よりよく生きることを支援しています。アビリティ支援センターでは、この活動に対して、どのように生活し、生きていくかという観点から「ライフデザイン支援」という名前を付けています。
 どのような支援が得られるのか、そもそも自分には障害があるのか、といった支援を受ける前の段階から、困りごとについて整理して、大学生活の指針を考えるカウンセリングも行なっています。

3.支援の入り口 ||
困りごと相談

 大学の中で遭遇することはしばしば自分の力で解決していかなければいけないことです。そのような前提があるために、自分に合わせて周りに調整をしてもらうという発想は出てきにくいものです。しかし、障害のために能力が発揮できていないのだとすると、やれることは他にも色々あるかもしれません。アビリティ支援センターでは、自分にはどのような支援が必要なのか、どのような支援を受けられるのか、そもそも自分の困りごとは障害なのかどうか、といった相談を受けています。障害があってもなくても、必要な方針を一緒に考えてみましょう。

4.修学支援 ||
環境整備

 現在、「障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律」(以下、障害者差別解消法)により、大学内での支援の調整や環境に関する調整を行っています(事前的改善措置)。
① ハード面のバリアフリー化
ハード面(建物や道路など)のユニバーサルデザイン化を推進するため、調査・調整を計画的に進めています。誰にとってもすごしやすく、移動しやすい環境整備に取り組んでいきます。
② ソフト面の整備
ソフト面(障害理解に基づく情報提供の仕方や説明の仕方、対応の仕方)について、全学的な環境調整を調査し、分かりやすい形で情報提供や施設・制度利用がされるように整備していきます。学びの基礎となる情報提供を積極的に進めていきます。
 ハード面、ソフト面の両方の底上げを進めていきながら、「誰でも使いやすい」を大切に推進いきます。

5.修学支援 ||
合理的配慮

 アビリティ支援センターで最も多い相談が、修学に関する調整です。特に合理的配慮の申請は、大学の正式な手続きとなるため、中心的な活動です。
 合理的配慮とは、障害がある学生であっても、他の学生と同じように履修し、そこでの学びを得る機会を保証し、またその成果を示す機会を保証するために、適切な配慮(調整)を行なうことを指しています。たとえば、聴覚障害がある場合には、講義内容を視覚的に把握できるような保証を行ないます。肢体不自由である場合には、移動や受講における身体的不自由さを補う方策を取ります。
 これらは必ずしも障害名で区別されるものではなく、それぞれの抱えている困りごとに応じて、合理的と思われる範囲で配慮(調整)を行なうものです。こうした配慮・調整について、名古屋大学では、カリキュラムに関係する活動、入試、大学の公式行事等を対象に提供を行なっています。
 詳しくはこちらをご覧ください。

6.ライフデザイン支援 ||
学習力支援

 合理的配慮ではカバーしきれないような個別の勉強に関するニーズに応えています。高校までのやり方が通用しない、大学の授業についていけない、先生に質問してもいまいち分からない、そんな学習にまつわる困りごとを支援しています。一人一人に合った学習のやり方を一緒に見つけましょう。各教科などの専門的な学習の支援へとつなげる支援もしています。学習の困りごとについて学生同士で解決策を探るグループや、自分の学習スタイルを探るための心理検査も行なっています。

7.ライフデザイン支援 ||
生活力支援

 障害に由来する特性をうまく捉え、人間関係や世界の仕組みを良く知ることで、人はどこまでも成長し、発達していくことができます。アビリティ支援センターでは、自分について知ること、特性についての理解の仕方を知ること、人間関係について知ること、社会の仕組みについて知ることがを支えています。また、そうした理解にもとづいて、自分の特性に合わせた生活の仕方、活動の仕方、大学生としての経験を重ねていくことを可能とするための活動も行なっています。

8.その他 ||
心理検査

 アビリティ支援センターでは、各種の心理検査も実施しています。心理検査は、良い・悪い、合格・不合格を調べるものではありません。置かれている環境やこれまでの歴史を含んだその人が、今現在どういう状態にあるかを把握するものです。現時点での前景と背景、得意・不得意などの心理検査の結果についてもていねいに説明します。