医学的な意味での身体障害は、視覚障害、聴覚障害、言語障害、肢体不自由、疾病等による障害が挙げられます。
2-1.視覚障害
視覚障害とは、映像をとらえる眼球、映像を伝達する視神経、映像を処理する大脳などで構成される視覚系のいずれかの部分に機能障害があるために、見ることが不可能または不自由になっている状態のことです。程度としては、全くまたはほとんど見ることができないという状態(盲)と、見ることに不自由な状態(弱視)に分けることができます。
弱視は、一般的に、メガネやコンタクトなどを利用しても、視力が低い状態を指します。しかし、弱視には、以下のような状態も含まれます。視野が狭められている状態(視野狭窄)、視野の中に失われている部分がある状態(視野欠損)、明るい場所でものが見えない状態(羞明)、逆に暗い場所で見えない状態(夜盲症)、自分の意思とは関係なく眼球が動く状態(眼振)、両目で見るときにものが二重に見える状態(複視)、色の判別を付けにくい状態(色覚異常)などです。つまり、視覚障害とは、私たちが通常イメージする低視力の状態だけではありません。
また、すべての視覚障害者が点字を使っているわけではなく、音声によって主に情報を得ている人もいます。たとえ、点字を用意したとしても、点字が読めない人にとっては情報保障にはならないことになります。このことは、視覚障害者への支援方法が、画一的ではないことを意味します。したがって、個々人のニーズを把握した上での支援が求められます。
2-2.聴覚障害
聴覚障害とは、音を伝達するための構造や機能に(例、外耳、中耳、内耳、聴神経など)に何らかの問題があり、聞こえる音域が限定されていたり、その明瞭度が低かったりする障害です。医学的に両耳が 100dB 以上で「ろう(聾)」(例、ガード下の電車走行音が聞こえない)、そして高度、中等度、軽度の難聴と聴覚レベルに応じた診断がなされます。先天性と後天性の難聴の他に、何らかの理由で突然聞こえにくくなる突発性難聴や、機能的にはなんら問題はないのですが、心理的要因が原因とされる機能性(心因性)難聴などがあります。
聴覚器官は、大まかに外耳、中耳、内耳、聴神経に分けられますが、外耳、中耳に問題がある場合を伝音性難聴、内耳、聴神経に問題がある場合を感音性難聴と言います。前者では、音を伝達する骨や鼓膜などに問題があるため、いわゆる「集音能力」が低く、そのため大きな音であれば聞こえる場合も多いです。音を増幅させる補聴器の使用で日常生活に支障がほとんどないこともあります。一方で、後者の感音性難聴は、言わば神経性の難聴で、内耳で音の処理がうまくされなかったり、電気信号がうまく脳に伝わらなかったりします。そのため、音の内容がはっきりしない、音が歪(ひず)むなどの問題が起こります。うまく処理できない、ないしは伝わらない音声情報部分を補うように調整がなされた補聴器や音を増幅させる補聴器を使用します。老人性の難聴は、内耳の感覚細胞や神経繊維の変性が主たる原因ですので、感音性難聴が多いということになります。そして両者に問題がある場合を、混合性難聴と言います。
聴覚障害の程度は、デシベル(dB)という音の大きさを表す単位で表現します。数値が大きいほど、聞こえないことになります。ですが、「聞こえない」には、上述したように様々な「聞こえない」や「聞き取れない」があり、状態も様々です。また、学生生活においても困難はいろいろな形があります。例えば、大講堂の講義のマイク音は聞き取り難かったり、議論が主体のセミナー形式の講義では、話す人も複数人になるので大変になったりします。個別の状況を把握し、どのような方法で支援を行うかを精査する必要があります
2-3.言語障害
言語障害とは言葉を話したり、理解したりすることについての障害があるものを指します。頬、唇、舌、生体などの発声に用いられる気管やそれを司る筋肉、脳神経に異常があるために発生に困難が生じる構音障害と、言語を理解するブローカ野やウェルニッケ野といった脳の領域に異常があるために言葉を読む、聞くなどの形で理解したり、書く、話すなどの形で表出したりすることに困難が生じる失語症とがあります。
構音障害があると、言語の理解には問題がないものの、それを実際に言葉にして話すということがうまくできません。そのために、話すスピードがゆっくりになる、ぎこちない、言葉がぷつぷつ切れる、発音が不明確になる、といった症状が現われます。しかし、運動機能以外の機能は障害されていないため、書くことに問題はありません。一方、失語症の場合には運動機能には問題がなくとも、言語の理解そのものに部分的、または全般的な問題があります。大きく分けて、言葉は理解できても言いたいことが言葉にならない場合(ブローカ失語)と、言葉の意味そのものが理解できないために話していても意味が通らないことを話している場合(ウェルニッケ失語)とがあります。
言葉は人間にとって重要なコミュニケーション手段です。どのような障害であっても、言葉に不自由があるということは、考えや感情を共有することが困難であるこを意味します。大学の学修は言語による部分も大きいため、それだけ負担も増えることになります、リハビリテーションとともに、IT機器などを活用した学修補助の方法も考える必要があるでしょう。
2-4.肢体不自由
肢体とは、四肢(両手・腕と両足・脚)と体幹(胴体)を意味しています。肢体不自由とは、四肢と体幹の機能障害により、日常生活上の困難が一定期間にわたって続く状態のことをいいます。その原因としては、事故や病気などが考えられますが、肢体不自由かどうかは、一定期間にわたる日常生活上の困難があるか否かで判断されます。
肢体不自由者イコール車いす利用者と捉えられがちですが、下半身のみに困難がある人だけではありません。全身に困難がある人、上半身のみに困難がある人、または身体の一部が欠損している人、さらには姿勢を維持することができない人などが肢体不自由者の中に含まれます。その程度も、日常生活に大きな困難がある場合から、ほとんど困難がない場合まで、さまざまです。肢体自由者の中には、杖(クラッチ)を使っている人や何も使っていない人もいます。
また、肢体不自由の困難が外見上判別できないことも多くあります。たとえば、上肢はあっても力が入らなかったり力のコントロールができなかったりする人、体温調整が難しい人などがいます。肢体不自由者に対しては、外見上判別できない困難もあることを考慮した上での支援が求められます。
2-5.疾患等による障害
疾病等による障害には、内臓や免疫システムに機能的問題がある内部障害、糖尿病などの慢性疾患、難病による身体的・社会的機能の障害が含まれます。これらの障害により、身体機能、視力や聴力が低下したり、抑うつ症状を呈したり、また車椅子の使用が必要になることもあります。ですから、疾病を原因として身体障害(視覚障害、聴覚障害、肢体不自由)になることも、二次的に精神障害を併発することもあります。急性的な疾患によって、一時的に上述の障害が示されることがありますが、治療が優先ですので、修学支援の対象になるかは個別に判断されます。また、こういった疾病の治療により社会的な機能が低下することもあります。例えば、腎機能の低下により長時間の人工透析が必要になってしまうと、仕事や学業に、つまり社会的機能に障害が出てしまいます。